
"幻の"レンズである。一説に15本のみ作られたとされている。(*1)
(*1) Non Leitz LEICA Thread-Mount Lenses by Marc James Small
銘板の表記にはレンズ名がSonnarとあるのみで、通常記入されているCarl Zeiss JenaであるとかOptonなどのメーカーを示す表記が無い。
このレンズの製造番号は140万番台で、(*1)の本に記されているのと同じロットになる。
最近Zeiss研究家からの報告では、1949年発行のZeissの冊子が見つかって、それによると、Zeissの正式な製造記録には乗っていないレンズということだ。それで140万番台のシリアルのレンズは全部贋物だというコメントをいただいた。
でも、見た目はゾナーそっくりのこのレンズは一体何?

製造番号が記されている銘板の刻印は銀象嵌の手の込んだものなのである。ちょっと見は手彫りの文字かと思ったが、銀象嵌のにじんだような線の具合が手彫りのように見えたのだった。

レンズの鏡胴はアルミ製で本家であるSonnar 5cmF1.5やロシア物であるJupiter-3などと似た作りとなっている。似た作りとはいえ、アルミの素材は他にないくらい良質のもので、古いレンズであるのにアルミにバフがけされた表面の艶は酸化による劣化も少なく良いコンディションを保っている。

レンズは5cmF1.5のSonnarと比べれば一目瞭然であるが、鏡胴の長さは5.8cmのほうが長い。丁度焦点距離の差ぐらいの違いがある。前玉と後玉の径も異なり5.8cmのほうが一回り大きいのがわかる。これはまさに5cmレンズの単純なコピーではなく、相似形となる別製のレンズである。
似ているけれど、違う物といった感じだ。
では、なぜ15本しか作られなかったのか??という疑問が出てくるところだ。
まったく、このレンズの出自は謎である。
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